腰痛症(ようつうしょう)は、腰部に痛みを感じる症状の総称であり、その原因や程度は多岐にわたります。
特に、明確な器質的疾患(ヘルニアや骨折など)が認められないが、慢性的または急性的に腰痛を呈する状態を指すことが多いです。
@ 腰痛の有訴者率
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査によると有訴者率の高い症状として、男女ともに「腰痛」が1位でした。
1000人あたり男113.3人、女111.9でした。
A 腰痛の原因
- 特異的 15%
原因が分かっているものによるもの。原因としては脊椎・関節由来、神経由来、内臓由来、血管、心由来等があります。
脊柱由来としては椎間板、椎間関節、仙腸関節、脊柱管(脊柱管狭窄)、脊椎(骨粗鬆症、圧迫骨折、椎体炎)等があります。
筋由来として筋力低下や筋緊張によるもの、神経由来では脊髄腫瘍、帯状疱疹が該当します。内臓としては消化器系(胃・十二指腸潰瘍、胆石、胆嚢炎、膵臓炎、肝炎)、泌尿器系(尿路結石、腎結石、腎盂腎炎、前立腺癌)、婦人科系(子宮内膜症、子宮癌)、循環器系(心筋梗塞、解離性腹部大動脈瘤)も 腰痛を生じる可能性があります。
- 非特異的 85%
B 治療法
- 薬物療法
1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsは、腰痛症の第一選択薬として広く使用されています。
代表薬剤
経口薬: イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ(選択的COX-2阻害薬)。
外用薬: ジクロフェナク、ケトプロフェン(湿布やゲル剤として)。
注意点: 胃腸障害(胃潰瘍や胃炎)、腎機能障害のリスクがある。
2. 筋弛緩薬
筋肉の緊張を緩和することで、痛みを軽減します。
代表薬剤
チザニジン: 中枢性筋弛緩薬。
エペリゾン: 筋肉の過剰な収縮を抑える。
注意点: 倦怠感や眠気の副作用があるため、運転や機械操作時は注意が必要。
3. 鎮痛補助薬
神経性腰痛や慢性腰痛に対して有効な薬剤。
抗うつ薬(TCA、SNRI)
アミトリプチリン: 神経性腰痛や慢性腰痛に有効。
デュロキセチン: 腰痛を含む慢性痛の治療に適応あり。
抗てんかん薬: プレガバリン、ガバペンチン: 神経障害性疼痛に有効。
注意点: 倦怠感、眠気、めまいなどの副作用が出やすい。
4. アセトアミノフェン
軽度から中等度の痛みに対して胃腸障害が少ないため安全性が高い。
注意点: 高用量で肝障害のリスクがあり、用量を守る必要がある。
5. オピオイド(麻薬性鎮痛薬)
中等度から重度の腰痛に使用。ただし、慢性腰痛には慎重に使用。
代表薬剤
トラマドール: 弱オピオイドで、慢性腰痛に比較的安全。
- 運動療法
慢性腰痛に対する運動療法は効果的とされ、多くの臨床研究で支持されています。
Hayden JA, et al. (2005). Exercise therapy for treatment of non-specific low back pain. Annals of Internal Medicine.
Saragiotto BT, et al. (2016). Exercise for chronic non-specific low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews.
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